イギリスがEUを離脱した2020年1月31日に先立ち、移民諮問委員会(The Migration Advisory Committee 通称MAC)から出された報告書の中で離脱後の移民システムに関して、中でも特に就労(Tier 2)ビザ関連に注目が集まっています。
正式に離脱へと歩を進めたとはいえ、イミグレーションシステムについても未だ不透明な部分が多いのが現状です。そのような状況の中で発表された移民諮問委員会からの報告書は、今後のイミグレーションシステム構築の指針となります。
そこで今回は、移行期間終了後のイギリス就労ビザ申請の方向性の要点をお伝えします。
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2020年1月28日に発表された移民諮問委員会(以下、MAC)の報告書では、就労ビザの中でも現地採用者ビザのカテゴリであるTier 2 Generalについては現在の基本的枠組みを維持するべきだと、まず第一に挙げています。
この基本的枠組みというのは、雇用主であるスポンサーからの内定をもってTier 2 Generalビザを申請することができる、というシステムのことです。
EU離脱が完了する移行期間終了後は、イギリス国内の労働力確保の点で大きな問題を抱えることになると言われています。そのような背景もあって、政府はオーストラリア形式のシステムを新たに導入する意向も見せていますが、しかし、MACは政府に対して再考を要請し、なおかつ、現在のスポンサーありきのシステムに関しては変更すべきではない、という見解です。
ここ数年の間に就労カテゴリの中でも特にTier 2 Generalに関しては移民削減政策を反映して年々、厳しくなる傾向にありました。その代表的な例として、最低給与基準額があります。
最低給与基準額とは、Tier 2 Genralを申請するためにスポンサーが保証する給与額が満たしていなければならない基準額(※)のことで、これを下回る場合はビザ申請ができません(※最低給与基準額あるいは職種毎の設定給与額のどちらか高い方を満たしている必要があります)。
Tier 2 Generalにおける最低給与基準額は2016年11月以前£20,800だったものが£25,000に、さらに2017年4月以降は£30,000へと引き上げられ、現在に至っています。
今回、MACの意見書の中の大きなポイントとして£30,000の最低給与基準額を引き下げ、£25,600あたりにすべきだと述べられています。
実はこの点について、MACは昨年にも意見書の中で指摘しており全く目新しいことではありません。しかし、現実に移行期間の終了が2020年末と迫っている中、2021年からのイミグレーションシステムを構築していく中で最低給与基準額の引き下げが実現する可能性は非常に高いのではないかとみることができます。
実現すれば、上昇する最低給与基準額によってTier 2 Generalビザでのスポンサーが困難になっていた雇用者や申請希望者にとっては大きなメリットになるでしょう。
しかし、労働力の確保が難しい職種の中にはこの基準額を満たすことが難しい職種も多く、引き下げられたからといってそれが労働力の確保に直結するとは限らないであろうことも指摘されています。
そのため、これまでTier 2カテゴリに関しては高技能者のみとしてビザ申請できる職能レベルに対しても規定がありましたが、これらの職能レベルや職種の見直しも図られるとみられます。
移行期間は2020年末で終了します。今回ご紹介した最低給与基準額の引き下げを始めとする就労カテゴリのルールやシステムについてはまだ確定しておらず、正式発表は今後の発表を待たなければなりませんが、今回のMACによる意見書によって方向性が見えてきたと言えるでしょう。
2021年に向けてイギリスイミグレーションは大きな転換期を迎えます。そのような時には確定あるいは不確定情報が混在することが予想されますので、常に最新の情報で照会できるようイミグレーションの専門家からアドバイスを仰ぐことをお勧めします。
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