目前に迫る欧州連合(EU)からの離脱をめぐりイギリス国内議会では緊張感が高まり議会内の意見も割れ、未だ混迷が続く状況です。
本号では今回、不確定要素が多い中ではありますが、離脱後のEEA国籍者とその家族のイミグレーションステイタスに関してこれまでにHome Office(内務省)から発表された事項から現在の状況をまとめ、お伝えいたします。
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イギリスが今まさに直面している欧州連合からの離脱では、離脱後の経済・貿易体制を巡って非常に困難かつ複雑な問題が山積している状況ですが、同様にEEA域内での人の移動の自由(Free Movement)、つまりイミグレーションについても大きな課題となっています。
後1か月に迫った離脱、その後については欧州連合(EU)における法規制から新法下への移行期間が設けられることが発表されています。
しかし、EUとの合意を得ての離脱になるのか、あるいは合意のないままに踏み切るのかによって、この移行期間のスケジュールが異なります。
合意を経た場合は2021年6月30日までを移行期間として設けられる予定で、それまでの間は現行法での適用・保護がなされつつ、新法への移行準備として認められます。しかし、合意なき離脱となった場合、この移行期間は2020年12月31日で終了となります。
イミグレーションの観点からこの移行期間を説明しますと、EEA国籍者とその家族は離脱後も移行期間内は現行のEUにおける法律にもとづいてイギリス国内での滞在ステイタスを保持することができますが、終了後は新法制下でそれを証明しなければならなくなる、ということになるのです。
新法下でのステイタスを証明するための手続きは移行期間終了までに必ず終えていなければならず、その期日はEUとの合意を得られるかどうかによって変わるため、今後の動向には十分に注意を払う必要があるでしょう。
新法律下で新たに手続きが必要とはいえ、現行法のもとで取得した永住の権利や移行期間終了後の期間を含む居住の許可がすべて取り消される、無効になるという意味ではなく、例えば永住権取得者であればイギリスに永住する権利があることを新法システム下で改めて手続きを行い証明する必要がある、という意味です。
そのため現行の法律下ですでにEEA国籍者あるいはその家族として永住権あるいは2021年以降の期間を含む滞在許可書を取得していたとしても、移行期間中に新法制下で改めて手続きをし、すでに取得した永住権や滞在許可を移行期間終了後も維持できるようにしておかなければなりません。
離脱後の新法下でもEEA国籍者とその家族のイミグレーションステイタスを証明するためのスキーム「The EU Settlement Scheme」は2019年3月30日までに正式導入・実施される予定となっています(2019年2月現在公開されているスキームは完全版ではありません)。
離脱まで一か月を切るという状況の中にあってもイギリス議会内では意見が割れ、このままでは「合意なき離脱」となることが濃厚とみられるため、EEA国籍者またその家族で離脱後もイギリス滞在の可能性がある場合は2020年12月末を移行期間の期限と想定しておく方がよいでしょう。
EU離脱という前例のない事象を前にあらゆる面で不透明な状況が続く中、憶測や予断で動くことは大きなリスクを孕んでいます。
特にイギリス移民法は頻繁に改定され、難解で複雑さを増していく状況の中にあるため、些細なことでもビザ申請・延長の際には専門家のもとで最新情報と状況確認をすることで不測の事態を未然に防ぐことにつながります。
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