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新・永住権システム「Earned Settlement」: 2026年イギリスイミグレーションの行方

2025年は5月12日移民白書(Immigration White Paper)の発表以来、7月22日には就労ビザであるSkilled Workerビザ申請において、最低給与額および技能レベルの引き上げ・変更が同時に実施され、また来年1月8日からは同じくSkilled Workerビザ申請者に対して英語力レベルのB1からB2に変更することが発表されるなど、これまでにないスピード感をもってインパクトの大きなルール変更が実施されています。

2025年移民白書で明らかにされたイミグレーションルールの厳格化はそれだけにとどまりません。

移民白書内では就労ビザルートからの永住権申請をこれまでの5年から10年に変更する方針が述べられていましたが、去る11月20日、英国政府は2026年4月からの導入を目指して永住権申請を大幅に再構築する「Earned Settlement(稼得型永住権)」 の提案を公表し、現在パブリック・コンサルテーション(意見公募)を開始しています。

今回提案されている獲得型永住権では、これまでの永住権申請の条件・枠組みを大きく変更する可能性があり、多くのビザ保持者に影響が及ぶことが予想されています。

そこで今回は現在提案されている「Earned Settlement」とは何かをお伝えします。


「Earned Settlement」とは

獲得型永住制度では、以下の4つの柱(pillars)を満たすことで英国に永住する権利を得ることができるというものです:

① 適格性(Suitability)
• 犯罪歴がないこと
• National Health Service(NHS)未払いなど、公的機関への債務がないこと

② 統合(Integration)- イギリス社会・コミュニティへの順応と統合力
• 英語レベル B2
• Life in the UK テスト合格

③ 貢献(Contribution)
• 課税所得が £12,570以上 の年収を 3~5年間 維持 ※この年数や免除対象については今回のコンサル対象

④ 加速要因(Accelerators)
• 一定の条件を満たすことで、後述の10年要件を短縮できる可能性があります。※どの加速要因を採用するかは現在コンサル中
例:
・高所得 (£125,140×3年) → 7年短縮
・所得£50,270×3年 → 5年短縮
・公共サービス職に5年従事 → 5年短縮
・英語C1 → 1年短縮
・家族ルート(配偶者ビザなど) → 5年短縮
・コミュニティ活動 → 3~5年短縮

イギリス永住権は自動的に与えられるものではなく、公平で公正な条件(柱)を満たすことで獲得できるものでなければならない、というのが新しい永住権システムの基本概念となっています。

パブリック・コンサルテーションで永住権申請条件を変えられるのか

現在、英国内務省では2026年4月開始を目指して「Earned Settlement」システムに関して意見を公募しています。これはつまり、Earned Settlementシステムでは一般からの意見に基づいて決定する余地がある、つまり今の時点では可変である部分を残していることを意味します。

ただし、意見を募集している対象項目は限定されています。

Earned Settlementに関するパブリック・コンサルテーション
【意見募集対象】
• 貢献(Contribution)
〇 課税所得£12,570以上を 何年間 求めるか(3年/4年/5年)
〇年収要件の免除対象(育休・長期病気・障害など)
• 加速要因(Accelerators):採用する加速要因の内容
〇 移行措置の設置有無
〇 その他:保護すべき弱者カテゴリー

【募集期間】2026年2月12日イギリス時間午後11時59分まで

【意見先】Open consultation : Earned settlement 内: Ways to respond / Respond online

在留資格年数は10年になるのか

永住権申請システムの変更・再構築で最も注目が集まっているのは資格年数が引き上げられるのか否かではないでしょうか。

今回のパブリック・コンサルテーションでは永住までの必要在留期間引上げに関しては対象外としています。意見募集の対象ではない、ということから現在の在留期間5年という条件が10年に引き上げられる変更はほぼ既定路線とみることができます。

つまり現在の多くの5年ルート(Skilled Worker等)は今後10年へと引き上げられる可能性が高い、ということです。

ただし、現時点ではEarned Settlementシステムそのものもまだ「提案」の段階であり、最終決定ではありません。

※本記事記載情報は2025年12月1日執筆時点

Earned Settlementシステムの影響範囲

現時点での提案通りであれば、新システム下で影響を受ける可能性が高いカテゴリは以下のものです:

• Skilled Worker
• Global Talent
• Innovator
• Scale-up
• 長期在留ルート(Long Residency、Private Lifeなど)

ここで注意が必要になってくるのは、今現在すでにこれらのビザを取得してイギリスに滞在している場合は、新しいEarned Settlementシステムの導入と在留資格年数の引き上げに影響されるのかどうかという点でしょう。

慣例的には今回のような大きな変更があった場合は移行期間あるいは移行措置が取られ、ビザ申請をした時点での条件が引き継がれる移行期間・措置がとられてきました。

移行措置とは、既にイギリスにビザを取得して滞在しており、そのビザルートでの永住権申請が可能な人々に対して新しいルールの影響を緩和するために設計される一時的な措置のことを指します。

これまでのところ内務省から発表されているEarned Settlementシステムに関する文書には移行措置に関しては言及がなく、またこの点に関する情報は詳らかにはされていません。

しかし、2026年2月12日まで募集しているパブリック・コンサルテーションでは、移行措置の設置の有無に関しても意見を募っていることから、移行措置を設けない可能性もあることが伺えます。

今できること

新しい永住権申請システムの導入は現時点では2026年4月を予定しているとされています。永住権申請を視野にいれている方が今できることは

  • パブリック・コンサルテーションで意見を提出する:移行措置を設けるか否かについても意見をすることができます。既にイギリスにいる方で永住権申請を視野に入れていらっしゃる場合は意見提出をされることをお勧め致します。意見提出は匿名。オンライン受付は2026年2月12日まで。専門家や企業に限らず個人でも意見提出が可能
  • 自身の長期的な在留計画の見直し:Earned Settlementシステムにおいて在留資格年数の基本は10年へと引き延ばされます。このことにより現在Long Residencyとして知られる10年の長期在留ルートは新システム導入によって事実上閉鎖される見込みです。Long Residencyを通じて永住権申請を予定されている方は早めに専門家に相談されることをお勧め致します
  • 専門家にアドバイスを求める:現行ルートでの永住権申請の前倒しが可能かどうか等を検討するための情報を得る

Earned Settlementシステムは現在までのところ「提案」であり、最終決定ではありません。また在留資格年数10年に引き上げるという点についても変更の可能性は非常に高くこれまでの発表からほぼ既定路線だと考えられますが、移行措置の有無も含めて最終的な決定と発表を待つ必要があります。

弊社でも引き続き最新情報をフォローし、今後の情報更新を随時お知らせ致します。

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