2016年6月の国民投票を受けて本年3月末に正式にEU離脱を通告してからというもの、EU離脱関連のニュースが報道されない日はないといっても過言ではありません。
正式な離脱通告から2年後にはEUを離れることになるため、イギリス政府はEUとの関係清算金、イギリス国内のEU市民の権利、アイルランド内のイギリス国境など山積する問題への対処に迫られています。
EU離脱は、2017年3月末の正式なEU離脱通告から2年後、つまり、2019年3月末にはEU離脱が実行されるということであり、それはあと1年半弱ほどと日が迫ってきています。
このような短期間で、イギリス政府は国内議会の承認をとりつつ移民や貿易などの各方面でEU諸国との交渉・合意をとりつけ各種の法整備を進めていかなくてはなりません。また同時にイギリス国内における離脱後のシステム整備のための準備もまとめていかなければならないという難局に面しています。
なかでも特にイミグレーションに関しては、360万人ともいわれるイギリス国内のEEA国籍者とその家族に大きな影響があることは容易に推測でき、イミグレーションシステムへの対応は政府にとって急務となります。
ビザ申請や延長など、イギリス内務省(Home Office)で取り扱うイミグレーションのケースは年間総数約300万件、最大6,500人の職員が携わっているといわれ、この中にはもちろん、現行のEEA規定のもとで申請されたEEA国籍者とその家族に関する申請も含まれます。
しかし、2016年6月の国民投票によってイギリスのEU離脱が決まると国内の多くのEEA国籍者の間に不安が広がり、滞在権利を法的に証明するためにイギリスの永住権であるPermanent Residencyの申請を急ぐ動きがでてきました。
さらに、内務省はEU離脱後のEEA国籍者のイギリス滞在に関しては新たな法の下でビザあるいは滞在ステイタスを証明する必要があるということを明言したため、離脱前後の申請ケースは大幅に増加することが予想されます。
今年5月には政府系シンクタンクのレポートでEU離脱に伴うイミグレーションケース増加に対応するためには5,000人の人員増強が必要と発表されました。
内務省はEEA関連のケースに当たる要員としてこれまでに700名を新規採用しました。来年2018年4月までにさらに500名を採用する準備を進めており、EEA関連ケースに当たる人員を合計で1,200名増強し、離脱前後のケース増加にあたるとしています。
また、人員増強と同時に、申請プロセスに関しても改良をすすめていると発表しました。これまではEEA国籍者がPermanent Residencyを申請する際には紙の申請用紙を用いなければならず、この申請用紙は80ページほどのヴォリュームとなり、申請者にもまた審査・処理する側にも時間と負担がかかるものでした。
今後それをオンライン化することにより効率化し5,000名の人員が必要だといわれていたものを1,200名の増員で対応できるシステムを2018年末までに確立するとしています。
EU離脱に伴う大きな法改定では、特にイミグレーションに関しては移行期間が設けられることが予想されます。しかし、法改定によって影響が及ぶ範囲がかなりのものとなり、また改定に伴い新システムも導入されるとなると、大きな混乱が生じることとなるでしょう。
現時点でEEA国籍者はPermanent Residencyなどそのステイタスを証明するものを必ずしも取得しておく必要はありません。しかし、離脱後もイギリスに滞在することを検討している場合、特に非EEA国籍者の家族とともにイギリスに滞在する場合は離脱前であってもPermanent Residencyなどの滞在証明を取得しておくことは、移行期間中の混乱・ストレスに巻き込まれることを少しでも避けるためのひとつの方策として考えられるでしょう。
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