イギリスのイミグレーションを取り巻く環境はこの数年で大きく変化してきました。そんな中でも2019年は特に就労・ビジネスカテゴリにおいて特徴的な変更がみられた一年といえるでしょう。
EU離脱という移民政策上の最重要課題に関しては2020年1月末まで延長が認められたとはいえ、来る12月12日の総選挙の結果によってこれまでの舵取りが覆される可能性もあり、まだまだ目が離せない状況です。
これから二回にわたって2019年のUKイミグレーションを振り返り、来年への考察をしてまいります。
12月を目前に控えた今回は、2019年の変更点の中でも就労・ビジネスに関わる変更点に絞ってお伝えします。
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2019年、イギリスのイミグレーションにおいて最も注目すべき点は、新規起業家ビザ(Tier 1 Entrepreneur)の廃止とその代替ともいえるスタートアップおよびイノベイタービザカテゴリの新規導入でしょう。
これまでもイギリスは投資や起業をかなり積極的に後押ししており、年々厳しさを増す移民削減政策の中にあってもその姿勢を基本的に崩すことはありませんでした。
具体的には、Point Based System(PBS)下のTier 1 Entrepreneurビザとして、事業の種類や規模の大小を問わず多くの起業家たちをイギリスへと惹きつけるためのカテゴリの設置などです。
しかし、EU離脱という政治的にも経済的にも歴史的インパクトの発生に備える意味で、経済・ビジネス面の強化のためイミグレーションでも更なる施策が必要と考えられてきました。
そのような流れを受けて投資家ビザも含めてこのカテゴリの見直しや改革が検討されはじめ、昨年2018年6月にこのTier 1 Entrepreneurに代わるビザカテゴリとしてスタートアップビザ(Start-up visa)を導入すると発表、その後2019年3月29日より実施となりました。
このスタートアップビザとは従来の起業家ビザとはどのように異なるのでしょうか。
最も異なる点は、スタートアップビザを申請するためにはまず第一に申請者はその新事業の計画書、ビジネスプランの承認を得ておかなければならないという点です。
従来の起業家ビザではビザ申請時に必要提出書類のひとつとしてビジネスプランを提出し、審査の過程で判断材料とされてきました。
しかし、3月29日から導入されたスタートアップビザでは、ビジネスプランの承認を得てからでなければまず、申請そのものができないというシステムとなっています。
つまり、第一段階として新規事業のビジネスプランが精査され、その結果認められた場合のみビザ申請の段階に進めるという流れです。
ビジネスプランの精査は、内務省(Home Office)とは独立した団体でビジネスに精通した専門団体や大学などの高等教育機関が提案ビジネスの革新性、実現・実行性そして将来の展開・拡張の可能性について具体的に吟味し、承認するかどうかを決定します。
従来のTier 1 Entrepreneurでは起業のための資金力がまず第一の条件として挙げられ最低20万ポンドの資金力証明が申請のハードルとなるケースもありました。
一方、新しいスタートアップビザでは資金力証明ではなくビジネスの有効性で判断することによってより優秀な起業家にビジネスチャンスを与えていくものと期待されています。
このように、実力ある起業家にとっては非常に魅力的にも思えるスタートアップビザですが、3月の導入からの実績数を見る限り、多くの申請者を惹きつけるものとはなっていないようです。
実際には、スタートアップ・イノベイタービザ導入から6月までの3か月間で申請数は全体でわずか4件のみと伝えられています。
申請数がこれほどまでに少ない理由としては、ひとつには実施後まだ間もないということが挙げられますが、ビジネスプランの精査と承認団体からの承認を受けるというステップが大きなハードルとなっていることは間違いないでしょう。
このような状況の中で、来る2020年にイギリスでのビジネスを志す起業家が、選択肢のひとつとして視野にいれるべきカテゴリがあります。
それは支社設立代表者ビザ、Sole Representative ビザです。
支社設立代表者ビザとは、その名の通り、支社を立ちあげるための人材をイギリスに派遣するためのビザです。
そのため、一からビジネスを起ち上げる場合とは異なり支社を出すための母体となる親会社の存在が必要です。つまり、既にイギリス国外で事業が運営されていることが前提となります。
また、母体事業の経営が継続的になされていること等が条件となるため、ビザ申請のための条件を満たすまでにケースによってはある程度の時間を要することもあります。
しかし、Tier 1 Entrepreneurビザのように20万ポンドという資金証明金額の条件はなく、またスタートアップビザのように特定認定団体からのビジネスプラン承認が必須というわけでもありません。
もちろん、申請にはさまざまな条件を満たさなければなりませんが、この二点においてだけでも、イギリスでのビジネスを考える起業家にとって、支社設立代表者ビザは検討に値するものと言えるのではないでしょうか。
イギリスのイミグレーションは政治や時局を反映して、常に変更と改定を繰り返しており、この数年間は厳しい状況が続いてきました。しかし、ビジネスイミグレーションの面では変化し続けながらも可能性と選択肢があります。
来る2020年も、イミグレーションルールの改定・変更は頻繁に行われることが予想されますが、変化の中でもイギリスでのビジネスには大きな可能性が期待されています。