11月に入って再び1ポンド185円を突破し、昨今の物価高・エネルギー高とあわせて新聞等メディアでも加速する円安への懸念の声を耳にします。
海外へのビジネス進出と展開を検討していても、このような情報を聞いて躊躇してしまわれるかもしれません。
懸念ばかりに思われる円安ではありますが、一方では日本国外からの需要を後押しする大きな要因にもなり、また日本国外で得た外貨をより多くの円に転換できるという側面もあります。
さらに、日本とイギリスは日英包括的経済連携協定(UK-Japan Comprehensive Economic Partnership Agreement:略してEPA)を結んでおり、日系企業のビジネスのイギリス市場へのアクセスを推進し維持するための制度が整えられています。
その中で2022年4月から開始されたGlobal Business Mobilityルートに属するカテゴリのひとつ、UK Expansion Workerビザでは、日本企業のイギリス進出をイミグレーション・ビザの面から促進するための措置が取られ、日本企業のイギリス進出を後押ししています。
そこで今回はイギリスに新たに支社を設立しビジネスを展開させていくために必要なビザ、UK Expansion Workerビザに関してお伝えします。
UK Expansion Workerビザとは
UK Expansion Workerビザ(以下UKEW)は、支社設立代表者ビザであるRepresentative of an Overseas BusinessあるいはSole Representativeと呼ばれてきたビザに代わるカテゴリとして2022年4月11日から開始した比較的新しいビザカテゴリです。
支社設立代表者ビザが前身となっていることからも分かるように、UKEWビザはイギリスに支社を設立する場合に付与されるビザで、支社設立と事業展開をするための人材を親会社からイギリスへ赴任させることができるようになります。
たとえば、日本で起ち上げ中国や香港にも発展させてきた事業を次は新たにイギリスへと持ち込み展開させていくーそのための先発隊を送り込む際に取得するのがUKEWです。自社の人員をイギリスへ派遣するという性質からUKEWは企業間移動のひとつのルートとして、いわゆる駐在員ビザとして知られるSenior or Specialist Worker(旧:ICT)と同じGlobal Business Mobilityルートの下に位置づけられています。
スポンサーライセンスの取得
駐在員ビザのSenior or Specialist Workerと同じGlobal Business Mobilityルートに属しており、このカテゴリのビザ取得にはまずはスポンサーとなる企業にスポンサーライセンスの取得が義務付けられています。
スポンサーライセンスとは日本人をはじめとする外国籍者に対し就労ビザの発行するためのもので、雇用主となる企業はイギリス内務省(Home Office)にライセンス登録の申請と取得が必要です。
多くの場合イギリスで既に事業活動している企業がライセンスを申請しますが、UK Expansion Worker(UKEW)はこれから新たに事業を開始する準備段階の企業が申請するため、UKEWのライセンス申請には既存の在英企業の申請とは異なり以下のような条件が求められます:
- イギリス企業登記局(Companies House)で支店・支社登録が完了していること
- イギリス国外の親会社の事業が少なくとも直近3年以上継続していること
- イギリスにおける明確かつ具体的な事業計画を提示できること
- イギリスでの事業展開するための体制と準備が整っていること
これらの条件のうち、日本企業の申請の場合は2)の直近3年という条件を直近12か月と大幅に短縮することが可能です。
これは日系企業のイギリス進出を促進することを目的とした日英包括的経済連携協定によるもので、日本のビジネスをイギリスに誘致するためイギリス政府の積極性が表れています。
UK Expansion Workerビザ申請
UK Expansion Workerのライセンスを取得後、イギリスへ派遣する支社設立スタッフのビザ申請へと進めていきます。
2022年4月以前の支社設立代表者ビザは1名のみでしたがUK Expansion Workerでは最大5名まで申請・取得することができます(※注:上述の日本企業への優遇措置(事業継続の証明を12か月に短縮)を利用して申請した場合は1名のみとなります)。規模やスケジュールに応じて人員配置することが可能ですのでその点においてUKEWビザは柔軟になったといえるでしょう。
ただし、UKEWには注意も必要です。UKEWビザは初回に付与されるビザの有効期限は最長1年、その後延長は可能ですが延長も1年のみとなり合計で最長2年のビザとなります。また、この2年間のビザ有効期限内に支社設立と事業の稼働開始が求められているため、UKEWのライセンス自体は4年間有効であっても、最初にUKEWビザで人員を送り込んでから実質2年以内に支社設立を完了させ、UKEWのライセンスとビザの切り替え手続きをしなければなりません。
このようにUKEWルートはライセンスを取得してビザで入国できれば安心、というわけにはいかず、イギリス入国後の支社設立と事業開始までの期限を踏まえたスケジューリングと細心の注意が必要です。イギリスへの事業進出のためのUK Expansion Workerライセンス・ビザの申請・取得には専門家のアドバイスを受けながら進めていくことを強くお勧め致します。
IMMIGRATION.UKは豊富な経験からイミグレーションルールを分かり易くご説明しながら、きめ細かくアドバイスさせていただいております。
これまでに個人あるいは法人を問わずに様々な業種のビジネス・企業のスポンサーライセンス、投資家・起業家ビザ、企業間異動者ビザを始めとする就労ビザ申請・延長などイギリスのイミグレーションに関するアドバイスとビザ申請のサポートを提供してまいりました。
イギリスでのビザ申請や就労、起業、支社設立をお考えの際はぜひ一度弊社までお気軽にお問い合わせください。