英国政府は2026年10月28日の予算発表で、英国での就労や大学・大学院卒業後の滞在に関わるビザ制度の見直しを明らかにしました。
2027年春に予定される給与要件の改定に加え、High Potential Individual(HPI)ビザの対象拡大や、一定の大学の卒業生に対するGraduateビザの在留期間の延長などが発表されています。
そこで今回は、英国での就職や転職、留学後の滞在を検討されている方に向けて、主な変更方針をご紹介します。
1)就労ビザの給与要件を見直し
就労ビザを申請する際には、仕事内容やビザのカテゴリー(現地採用者ビザ:Skilled Worker、企業内異動者ビザ:主にGBM Senior or Specialist Workerビザ)に応じた給与要件を満たす必要があります。
政府は、移民政策について英国政府に専門的な助言を行う独立機関、Migration Advisory Committee(MAC)の提言に基づき、2027年春から給与要件を見直す方針です。
職種別最低給与基準については、現在、その職種の給与水準の「真ん中」に当たる金額を基準としていますが、これをより低い給与水準に合わせて設定する方針が示されました。
一方、各ビザカテゴリーに設定されている最低年収額も更新されるため、すべてのケースで必要給与額が下がるとは限りません。しかし、見直しによってより実際の労働市場・給与水準を反映したものとなることが期待されています。
また、今回の見直しには、New Entrant(新卒採用者等)向けの給与要件の割引を一本化することや、PhDに基づく割引を廃止することも含まれています。
具体的な金額や条件については、今後の詳細発表を確認する必要がありますが、英国での就職や就労ビザへの切替えを検討している方にとって注目される変更です。
2)HPIビザの対象大学を拡大
High Potential Individual(HPI)ビザは、Home Officeが公表する対象大学一覧「Global Universities List」に掲載された大学で学位を取得した方などを対象とする制度です。企業によるスポンサーシップを必要とせず、英国で仕事を探したり、就労したりすることができます。
今回の発表の中で、HPIビザ対象大学の選定に用いる世界大学ランキングの基準を、現在の上位100位から150位へ広げ、制度の上限枠も増やす方針が示されました。
対象大学の拡大により、新たにHPIビザを利用できる方が増えることが期待されます。ただし、現段階では方針発表に留まり、具体的な情報については、今後公表される対象大学一覧や適用条件を確認する必要があります。
3)一定の大学の卒業生について、Graduateビザを2年間に
Graduateビザとは、英国の大学を卒業した留学生が、スポンサーなしで卒業後も英国に滞在・就労できる制度です。現在、大学の学士、修士課程を修了した留学生は2年間(※博士課程は3年)のGraduateビザを取得することができますが、2027年1月1日以降の申請では、この2年間の在留期間が18か月に短縮されます。
今回の発表では、英国政府は、一定の大学の卒業生について、Graduateビザの在留期間を18か月から24か月とする方針も発表しました。
対象は、ビザ制度の遵守状況が良好で、卒業後の就職状況などについても良好な成果が認められる大学の卒業生とされています。対象となる方には、卒業後に英国で仕事を探し、就労経験を積みながらキャリアを築くための時間が、より長く確保されることになります。
対象大学や適用開始日、どの時期の卒業者・申請者に適用されるかなど、具体的な条件については、今後の詳細発表を待つ必要があります。
4)一部の高度技能人材について、雇用終了後の在留猶予期間を拡大
Skilled WorkerやGBM Senior or Specialist Workerなどのスポンサービザを持ち、なおかつ一定の条件を満たす高度技能人材については、スポンサー企業での雇用終了後のビザ猶予期間を最長6か月とする方針を示しました。実施は2027年を予定しています。
Skilled Workerビザなどの就労ビザではスポンサー企業での就労が何等かの理由で終了した場合、状況に応じてビザの有効期限が短縮されます。短縮後のビザ期限内に、新たなスポンサーの下でビザ申請をするか、他のビザカテゴリへの切り替え申請をしなければなりませんが、そのどちらもできなかった場合は英国外へ出国しなければなりません。
今回の見直しは、対象となる高度技能人材が、雇用終了後も英国に滞在し、新たな仕事に就き、キャリアの継続やステップアップのための時間を確保できるようにするものです。
ただし、猶予期間は直前の高給与の職務に従事していた期間に応じて異なるとされており、すべての就労ビザ保有者に一律6か月が認められるわけではありません。また、もともと持っていたビザの有効期限を、猶予期間をもって延長するものではないことには注意が必要です。
対象者の基準や具体的な取扱いについては、今後の発表を確認する必要があります。
今後の詳細発表について
10月28日の予算発表では、就労ビザの給与要件や、英国で就職・転職するための選択肢に関わる見直しの方向性が示されました。
今後、英国での就労や卒業後の滞在を検討されている方にとっては、条件や選択肢を広げられる可能性を含んでいるように思われます。
しかし一方で、具体的な適用条件や開始日については、内務省からの正式な発表を待つ必要があります。また、イミグレーションルールは頻繁に改定・変更が行われます。そのため、今回の発表だけでご自身への適用を判断せず、申請時点のルールを確認することが大切です。最新情報をもつ専門家にアドバイスを仰ぐことを強くお勧めいたします。
詳細が公表され次第、改めてご案内いたします。
弊所では、英国での就労、ビザの切替え・更新など、個々のご事情に応じたご相談を承っております。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月30日時点の公表資料に基づきます。




