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新・永住権システム「Earned Settlement」:永住権取得までの期間はどう変わる?

2026年11月2日、英国内務省(Home Office)は、新しい永住権制度「Earned Settlement(獲得型永住権制度)」について、パブリック・コンサルテーション(意見公募)の結果を踏まえた政府方針を発表しました。

2025年11月に公表された当初案では、永住権(Indefinite Leave to Remain:ILR)取得までの標準的な在留期間を、従来の5年間から10年間へ延長することなどが提案されていました。

今回の政府回答では、20万件を超える意見を踏まえて一部の提案が修正されるとともに、新制度の具体的な枠組みが示されました。

特に注目されるのは、新制度の施行時点で既に英国に滞在しているビザ保有者についても、原則として新しい永住権申請要件を適用するという方針が明らかになったことです。

今回の新方針発表における主な変更点を、全2回にわたってお伝えいたします。

Earned Settlementシリーズ第1回目は、Skilled Workerをはじめとする就労ビザ保有者への影響を中心にご案内します。


「Earned Settlement」とは

Earned Settlement(獲得型永住権制度)とは、英国での在留期間だけでなく、申請者の素行、英国社会への適応、経済的貢献などを評価し、永住権取得の資格を判断する新しい制度です。

新制度では、以下の要素が重視されます。

① 適格性(Suitability)
• 犯罪歴や移民法違反などに関する適格性要件を満たすこと
• National Health Service(NHS)未払いなど、公的機関への債務がないこと

② 統合(Integration)- イギリス社会・コミュニティへの順応と統合力
• 英語レベル B2
• Life in the UK テスト合格

③ 貢献(Contribution)
• 原則として一定期間にわたり、政府が定める所得基準を満たしていること

④ 加速要因(Accelerators)
• 一定の条件を満たすことで、後述の10年要件を短縮できる可能性があります

イギリス永住権は自動的に与えられるものではなく、公平で公正な条件(柱)を満たすことで獲得できるものでなければならない、というのが新しい永住権システムの基本概念となっています。

永住権取得までの標準期間は10年間へ

今回の政府回答では、永住権取得までの標準的な在留期間を、現在の5年間から10年間へ延長する方針が維持されました。

ただし、新制度では、すべての申請者に一律10年間の在留を求めるわけではありません。所得や職業などの条件によって、永住権取得までの期間を短縮できる仕組みが設けられます。

政府が示した主な取得ルート(永住権取得までの期間と主な条件)は以下のとおりです:

【3年間】
年収£125,141以上を直近4年間のうち3年間満たす高所得者など

【5年間】
年収£50,271以上を直近5年間のうち3年間満たす方、または対象となる医療・教育分野の職種に従事する方など

【10年間】
標準ルート。年収£12,571以上を申請直前7年間のうち5年間満たすことなど

【20年間】
一定の移民法違反や、政府が指定する公的給付の利用など、特定の条件に該当する場合

ただし、上記は主な条件を簡略化したものです。

3年・5年・10年ルートでは、原則として申請直前5年間に政府が指定する公的給付を利用していないことが求められます。

また、いずれのルートについても、対象となる在留資格で必要な期間を満たすことに加え、英語能力、素行などの必須要件を満たす必要があります。

所得要件には「Best Years Approach」を採用

新制度では、申請前の一定期間のうち、所得基準を満たした年を評価する「Best Years Approach」が導入されます。

例えば、年収£50,271以上の5年ルートでは、申請直前の5年間すべてにおいて基準額以上の収入を得る必要はなく、そのうち3年間で基準額を満たしていれば、所得による短縮要件を満たす仕組みです。これにより、育児休暇や病気などで一時的に収入が減少した場合にも配慮されることになります。

なお、上記の所得基準額は将来の税制上の基準額の変更に連動する方針が示されています。

既に英国に滞在しているビザ保有者にも新制度を適用

今回の発表で特に重要なのが、既存のビザ保有者に対する新制度の適用です。

政府回答書では、新制度の施行時点で既に英国に滞在している方についても、特定の経過措置が適用される場合を除き、新しい永住権申請要件を満たす必要があると明記されています。

つまり、例えば現在Skilled Workerビザで英国に滞在し、従来の5年間の在留を経て永住権を申請する予定の方であっても、新制度施行後の永住権申請では、原則として新しい要件が適用されることになります。

これまでの制度変更では、既存のビザ保有者に対して従来の条件を維持する経過措置が設けられる場合がありました。

しかし、今回の政府方針では、既に英国に滞在しているという理由だけで、従来の5年間の永住権取得ルートを維持する一般的な経過措置は設けられていません。

一方、特定の介護職や医療・教育分野の職種などについては、一定の条件のもとで従来の5年間のルートを維持する経過措置や、恒久的な短縮ルートが示されています。

既に英国で就労ビザを取得していることが、従来の永住権申請要件の適用を保障するものではないという点は、特に注意が必要です。

就労ビザであれば、どのビザでも永住権を取得できるのか

Earned Settlementの永住権申請では、所得によって永住権取得までの期間を短縮できるとしても、すべての就労ビザが永住権取得の対象となるわけではありません。

今回の政府回答では、永住権取得に必要な在留期間として認められるビザルートと、認められないビザルートが区別されています。

例えば、Skilled Workerなど永住権取得につながるルートでの適法な在留は、所定の条件を満たすことで永住権取得に必要な期間として認められます。

一方、Global Business Mobility(GBM)ルートでの在留期間は、永住権取得に必要な在留期間には算入されません。

したがって、例えばGBMルートのSenior or Specialist Workerビザで年収£125,141以上を得ている場合であっても、その所得だけを理由に3年間で永住権を取得できるわけではありません。

GBMルートのビザ保有者が将来的に英国での永住権取得を希望する場合には、Skilled Workerビザなど永住権取得につながるビザルートへの切り替えを検討する必要があります。ただし、切り替えには該当するビザルートの申請要件を満たす必要があり、またGBMルートでの在留期間は原則として永住権取得に必要な期間に算入されません。

10年間のLong Residenceルートは廃止へ

今回の政府回答では、現在のLong Residenceルートを廃止する方針も示されました。

現行制度では、Student、Graduate、Skilled Worker、Global Business Mobilityなど、異なる在留資格での滞在期間を一定の条件のもとで合算し、10年間の適法な継続居住によって永住権を申請できるルートがあります。

しかし、新制度では、永住権取得につながる在留資格での居住期間を重視する方針となります。そのため、以下のような一時的な滞在を目的とするビザでの居住期間は、原則として永住権取得に必要な期間に算入されなくなります:

• Student
• Graduate
• Youth Mobility Scheme
• Global Business Mobility
• High Potential Individual
• Temporary Worker

これまで複数のビザを利用して英国に長期間滞在し、Long Residenceルートによる永住権取得を予定されていた方にとっては、大きな影響が生じる可能性があります。

英語能力や素行などの要件も厳格化

Earned Settlementでは、在留期間や所得だけでなく、英国社会への貢献、適応、法令遵守なども重視されます。

永住権申請に必要な英語能力は原則としてCEFR B2レベルとなり、Life in the UK Testへの合格も引き続き求められます。

また、犯罪歴や移民法違反の有無に加え、NHSの未払い医療費、税金など、公的機関に対する債務についても厳格な審査が行われる方針です。

なお、当初のコンサルテーションでは、英語能力がC1以上の場合に永住権取得までの期間を1年間短縮する案が示されていましたが、今回の政府回答では、この短縮措置は採用されないこととなりました。

帯同家族(扶養配偶者・子ども)の永住権申請

2025年11月のEarned Settlement制度の発表時点では、就労ビザ保有者の扶養配偶者についても、本人の所得や貢献度などに応じて永住権取得までの期間を個別に判断する案が検討されていました。

しかし、今回の政府回答では、主申請者とともに帯同家族も一緒に永住権を取得できる仕組みを重視する方向へ変更されました。

扶養配偶者が永住権を申請するには、まず主申請者が給与要件など、該当するビザルートに固有の永住権申請要件を満たし、永住権取得の資格を得られることが前提となります。

その上で、主申請者と同時に英国へ入国した扶養配偶者については、双方がそれぞれに適用される要件を満たしていれば、主申請者と同時に永住権を申請できる方針が示されています(※)。

また、18歳未満の扶養子女や、18~24歳で引き続きDependant Childとしての資格を維持している場合についても、一定の条件のもとで家族とともに永住権を取得できる仕組みが示されています。なお、18~24歳の扶養子女については、本人の所得要件は免除されるものの、原則として成人に適用されるその他の必須要件を満たす必要があります。

※ただし、主申請者が高所得者向けの3年間の短縮ルートに該当する場合などについては、今後公表される正式なルールで具体的な適用条件を確認する必要があります。

Earned Settlement制度はいつから実施されるのか

今回の政府回答では、Earned Settlement制度全体の具体的な施行日は明らかにされていません。

政府は今後、新制度の詳細をImmigration Rulesに反映させ、実務上の運用方法や技術的なガイダンスを公表する方針です。

したがって、今回発表された内容は新制度に関する政府の方針であり、現時点でEarned Settlementの新しい申請要件が全面的に施行されているわけではありません。

永住権取得を予定されている方へ

今回の政府回答により、永住権取得までの標準期間を10年間に延長することに加え、既に英国に滞在しているビザ保有者にも原則として新制度を適用するという方針が明確になりました。

特に、現在Skilled Workerビザで5年間の永住権取得を予定されている方や、Long Residenceルートでの申請を検討されている方については、今後の制度変更がご自身の在留計画にどのような影響を及ぼすか、確認しておくことが重要です。

新制度の具体的な施行日や詳細な申請要件については、今後のImmigration Rulesの改正等を待つ必要があります。

IMMIGRATION.UKでは、引き続き政府発表およびImmigration Rulesの改正動向を確認し、最新情報をご案内してまいります。

次回のEarned Settlementシリーズ第2回目は、英国籍者や永住権保持者の配偶者やパートナーなど、家族ビザ(Family visa)で英国に滞在されている方のEarned Settlementの影響についてご案内する予定です。

※本記事は2026年11月3日時点の政府発表に基づくものです。新制度の施行時期および詳細な申請要件は、今後公表されるImmigration Rules等によって確認する必要があります。

出典:A Fairer Pathway to Settlement: Government response to the consultation

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